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お知らせ

医師 (関 正明)の専門分野や発表論文など

私(関 正明)は、平成9年から平成24年まで新潟大学眼科学教室およびその関連病院において、眼科診療にあたってきました。新潟大学医歯学総合病院眼科では緑内障を専門分野とし、診察・手術に勤しんでおりました。

大学病院では、まれな病型や複雑な症例が多く、夜な夜な論文や教科書をひっくり返していました。日常診療はとかく経験に頼りがちですが、理論や根拠に基づいた診療を行うべく成長できたと感じています。新潟大学眼科勤務中には、緑内障とくに閉塞隅角緑内障や、その治療法の一つである白内障手術についての研究論文をいくつか発表いたしました。

新潟大学病院以外で勤務した済生会新潟第二病院と長岡赤十字病院は、どちらも大規模な病院でしたので、難症例での白内障手術経験を積むことができたことはもちろん、幅広い眼科疾患の診療にあたることができました。それに加えて、各々の病院で特色のある分野(網膜硝子体疾患、外眼部疾患や斜視)の診療・手術経験を培えたことも、現在の糧になっています。

臨床に従事するとともに、新潟大学脳研究所と米国バーナム研究所では基礎研究(神経科学分野)にどっぷり浸かり、「診察室・手術室から」だけではなく「研究室から」も眼科疾患を捉える視点を養うことに繋がりました。その結果、緑内障・糖尿病網膜症・弱視といった主要な眼科疾患に関わりのある研究をし、いくつかの論文が掲載されました。

以下に主な論文を、白内障・緑内障・糖尿病網膜症・弱視など、関係する分野別に、最近のものから順にリストアップしました。「Seki M」が私です。

(2014年9月 アップデートしました)

最新の論文や共著論文を含めた英語論文リストと日本語論文リストについてはそれぞれ下記をクリックして下さい。

関正明の英語論文リスト

関正明の日本語論文リスト

 

  • 白内障手術に関係する論文

Seki M, Yamamoto S, Abe H, Fukuchi T. Modified ab externo method for introducing 2 polypropylene loops for scleral suture fixation of intraocular lenses. J Cataract Refract Surg. 2013 Sep;39(9):1291-6.

難症例の白内障手術あるいは白内障の術中合併症のために、眼内レンズを眼内に縫い付ける場合があります(眼内レンズ縫着術)。この手技は比較的煩雑で術者としては気乗りのしない手術となってしまいがちです。当院の関正明医師が新潟大学眼科勤務中に開発した「簡便な眼内レンズ縫着方法」を用いると、エキスパートでなくても安全・迅速に本手技を施行可能と考えます。この英語論文に関する詳細はこちら

Seki M, Fukuchi T, Ueda J, Suda K, Nakatsue T, Tanaka Y, Togano T, Yamamoto S, Hara H, Abe H. Nanophthalmos: quantitative analysis of anterior chamber angle configuration before and after cataract surgery. Br J Ophthalmol. 2012 Aug;96(8):1108-16.

新潟大学眼科在職中の論文です。この臨床研究の論文は、イギリスの眼科学会が発行している眼科雑誌British Journal of Ophthalmology(直訳するなら英国眼科雑誌)に掲載されました。稀な疾患である小眼球症はしばしば閉塞隅角緑内障を合併します。その原因として、小さな眼球に比べて相対的に大きな水晶体の存在が想定されており、昔から治療として白内障手術(水晶体再建術)が行われていました。しかしながら、小眼球症での隅角(眼内の水「房水」の流出路。この隅角が閉塞することで緑内障を発症する)の所見を、定量的に解析した論文はこれまでにありませんでした。

小眼球症での白内障手術は、通常の白内障手術より技術的な難易度が高いものの、本論文で解析した11眼では重篤な術中合併症はありませんでした。また白内障手術前後の隅角所見を定量的に解析し、手術前は狭かった隅角が手術後に広がることを、統計学的に明らかにしました。しかしながら、必ずしも全例で隅角が広くなるわけではなく、隅角が広くならず閉塞隅角緑内障を根治できない患者さんもいることがわかりました。この点で、この論文は小眼球症に対する治療の難しさも示唆しています。さらに詳しい解説はこちらで読むことができます。

 

Yoshino H, Seki M, Ueda J, Yoshino T, Fukuchi T, Abe H. Fibrin membrane pupillary-block glaucoma after uneventful cataract surgery treated with intracameral tissue plasminogen activator: a case report. BMC Ophthalmol. 2012 Mar 20;12:3.

新潟大学眼科在職中に経験した稀な合併症の報告です。白内障手術の術中・術直後にはまったく問題のなかった患者さんが、手術5日後に急性の緑内障を生じました。フィブリン(血液中の凝固成分)でできた膜が瞳孔(ひとみ)に形成されたためでした。画像解析装置を用いて正確に診断し、フィブリンを溶解する薬剤を眼内に投与することで、緑内障は治癒しました。一緒に診療にあたってくれた眼科研修医に筆頭著者になってもらいました。この論文はオンラインで全文閲覧出来ます。

 



  • 緑内障に関係する論文

Seki M, Fukuchi T, Yoshino T, Ueda J, Hasebe H, Ueki S, Oyama T, Fukushima A, Abe H. Secondary glaucoma associated with bilateral complete ring cysts of the ciliary body. J Glaucoma. 2014 Sep;23(7):477-81.

これまでに報告のない両眼性かつ全周性虹彩嚢腫により閉塞隅角緑内障をきたした症例の報告です。白内障手術と硝子体手術により閉塞隅角緑内障は解除されました。

 

関正明, 福地健郎. 房水漏出. 眼手術学 6. 緑内障. 文光堂, 200-205, 2012.

緑内障に対する手術方法の一つである線維柱帯切除術(濾過手術、トラベクレクトミーとも呼ばれる)は、眼圧下降効果に優れ、緑内障診療の切り札的存在です。しかし、合併症の多さや術後管理の難しさがその欠点です。手術書の一節として書いた本文では、術後合併症である房水流出の管理について具体的な手術方法などを含め解説しています。

 

関正明緑内障性視神経症に対する神経保護治療. 医薬ジャーナル. 特集 緑内障治療の現状と課題 46(4): 1219-1222, 2010

緑内障は視神経(網膜で受けた情報を脳に伝達する神経)の病気です。緑内障になると、網膜神経節細胞(視神経を構成する細胞)が次第に細胞死に陥っていきます。その結果、まず視野障害を、さらに進行すると視力障害を来してしまいます。緑内障によって損なわれた視機能の回復は不可能です。それは何故でしょうか?人間を含め哺乳類では、網膜神経節細胞は再生しないからです。したがって、現在の眼科臨床においては、点眼や手術などにより眼圧(目を球形に保つために必要な目の中の圧)を下降させ、網膜神経節細胞がどんどん死んで行かないように予防治療をしているのです。つまり、眼圧下降を介して間接的な「神経保護」を行っています。

日本では緑内障患者さんのうち70%以上が、眼圧が正常のタイプ(正常眼圧緑内障)であることがわかっており、眼圧下降を介さない直接的な「神経保護」に対する期待が高まっています。しかし、直接的な神経保護治療の理論的な裏付けとなる科学的な根拠は得られていません。この論文では、神経栄養因子(網膜神経節細胞を健常に保ち生存能を高める)、グルタミン酸毒性(網膜神経節細胞に対する障害機構の一つとして提唱されている)という二つの観点から、緑内障に対する神経保護治療の可能性について論じています。新潟大学脳研究所と米国バーナム研究所での研究内容をもとに、新潟大学眼科勤務中に執筆しました。

 

Seki M, Lipton SA. Targeting excitotoxic/free radical signaling pathways for therapeutic intervention in glaucoma. Prog Brain Res. 2008;173:495-510. PubMed PMID: 18929130.

グルタミン酸毒性(緑内障による網膜神経節細胞に対する障害機構の一つとして提唱されている)が、はたして本当に緑内障に関与しているのか、グルタミン酸毒性を阻害する薬物が緑内障の治療薬になりうるのか、という二つの疑問について概説しています。メマンチン(グルタミン酸毒性を阻害する薬物の一つ。アルツハイマー病の治療薬として日本でも認可されている)が、なぜ米国での緑内障に対する臨床治験で有効性を示せなかったのか、メマンチンの薬理学的特徴を含め考察しています。米国 バーナム研究所に勤務中の仕事です。

 



  • 糖尿病網膜症に関係する論文

関正明, 富樫元,  安藤伸朗. 糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の視神経萎縮とそれに関与する全身および眼局所因子. 日本眼科学会雑誌 110: 462-467, 2006.

糖尿病網膜症に対する硝子体手術の後、とくに術中・術後の合併症がないにもかかわらず視力が回復しない患者さんを経験します。その原因の一つは視神経萎縮です。本研究で糖尿病網膜症患者さんを対象に硝子体手術後の視神経萎縮を調べたところ、その発生頻度は約10%で、腎機能障害がその発生の危険因子であることが示唆されました。済生会新潟第二病院眼科勤務中の仕事です。日本眼科学会が発行する雑誌に掲載されました。

 

関正明, 安藤伸朗. 糖尿病網膜症の網膜光凝固・硝子体手術のエビデンス. EBMジャーナル 6(3): 316-321, 2005.

日本では、糖尿病網膜症が成人の失明原因の第2位となっています(1位は緑内障)。血糖をコントロールして、糖尿病網膜症を悪化させないことが最も重要ですが、不幸にして眼科的な治療が必要なほど悪化してしまった場合、網膜光凝固術・硝子体手術が重要な役割を果たします。この総説では米国で実施された3つの大規模研究の結果を中心に、糖尿病網膜症に対する網膜光凝固・硝子体手術の効果について解説しています。しかしながら、いずれの大規模研究も古いため、進歩した最新の硝子体手術に関しての新しいエビデンス(医学的な根拠)の構築が求められているのが現状です。済生会新潟第二病院眼科勤務中の仕事です。

 

Seki M, Tanaka T, Nawa H, Usui T, Fukuchi T, Ikeda K, Abe H, Takei N. Involvement of brain-derived neurotrophic factor in early retinal neuropathy of streptozotocin-induced diabetes in rats: therapeutic potential of brain-derived neurotrophic factor for dopaminergic amacrine cells. Diabetes. 2004 Sep;53(9):2412-9.

内科の先生も糖尿病網膜症には関心が強いので、糖尿病の分野で有名なアメリカの英文雑誌、その名も「Diabetes (糖尿病)」に掲載されました。

糖尿病網膜症は血管病変が主な病態とされてきました。本論文ではラットに実験糖尿病を生じさせると、血管病変の発生より前から網膜の神経細胞死が起こること、糖尿病ラットの網膜では神経栄養因子の一つ「脳由来神経栄養因子(BDNF)」が著減していることを明らかにしました。これに対して、眼内にBDNFを投与すると網膜神経細胞死を抑制されることを示しました。この論文は、糖尿病網膜症に対する新たな治療薬の可能性を示すものとして、私の論文の中では、被引用回数(ほかの論文から引用された回数)が最も多いものとなっています。新潟大学脳研究所で研究していた大学院生時代の成果です。この論文はオンラインで全文閲覧出来ます

 



  • 弱視に関係する論文

Seki M, Nawa H, Fukuchi T, Abe H, Takei N. BDNF is upregulated by postnatal development and visual experience: quantitative and immunohistochemical analyses of BDNF in the rat retina. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2003 Jul;44(7):3211-8.

私は緑内障の治療に神経栄養因子「脳由来神経栄養因子(BDNF)」が使えないか、ということをテーマに新潟大学脳研究所で研究をしていました。しかしその当時は、正常の網膜でどれくらいBDNFがあるものなのか、それすら分かっていなかったのです。

この論文は、ラットでは瞼が開いた後、急激に網膜のBDNF量が増えることを明らかにしました。その結果から、「視覚刺激によってBDNF量が増える」と仮説を立て、ラットの弱視モデルで網膜のBDNF量を測りました。すると、弱視モデルの網膜ではBDNF量が著しく減少していました。BDNFには神経回路の形成を促進する作用もあります。本論文の研究成果から、これまでは脳が主体だと考えられていた弱視の形成過程に、網膜そのものも関わるだろうと考えられています。この論文は、眼科の基礎研究分野では最も権威の高い雑誌Investigative Ophthalmology and Visual Scienceに掲載されました。この論文もオンラインで全文閲覧出来ます

 

その他の論文は以下のリンクから:

関正明の英文論文リスト

関正明の日本語論文リスト